第2版のまえがき
2003年4月,本書改訂チーム結成当初にこれほどのレベルの改訂ができるとは想定していなかった。改訂プロジェクト開始に当たって,メンバーにはプロジェクト憲章,第1版の目次,発行当初から読者や現場のPMから寄せられた450近いコメントが配布された。
当初改訂プロジェクトはそれほど困難なものだとは考えていなかったが,プロジェクト進行方法の検討には思いのほか膨大な時間を費やした。当時本標準は既に,プロジェクトマネジメント・コミュニティの中でPMBOKと双璧と言える重要な位置づけになっていたため,どんな些細な修正でさえ慎重に取り扱わざるを得なかったのである。
プロジェクト・チームは,このことを念頭におき今日WBSが多様な業界でどのように利用されているかを明らかにするべく一連の議論,発表,インタビューを設定した。その成果としてWBSの実務における活用の実態が本書および付属のCD-ROMにまとめられたのである。
約5年前本書の第1版開発当時,インターネット,CD-ROM,DVD,インスタントメッセージ,各種無線技術などITの急激な進歩があった。そういった背景から,改訂チームは今後本書がどのような形態で現場のプロジェクト・マネジャーに読まれるようになるかを検討した。
このような検討の結果,当初容易に実現できると思っていたことが,実際には非常に複雑かつ困難であることが分かった。実務における現状のWBS適用例の増加だけでなく,まったく新しい適用分野の拡がりについても紹介するような要望が出された。そのような要望に応えるため,第2版は紙媒体だけでなくCD-ROMでも配布されることになった。
第1版発行以来,内容について詳細かつ広い観点でのコメントがたくさんあった。中には,多種多様な事例,チェックリスト,実務支援ツール,参考文献など具体的なリクエストも含まれる。本書は,業界での実務標準の適用を正確に反映する一方で,これらのコメントに対応できるよう慎重に進められた。また今回,高品質なWBS作成の秘訣,および現場でのWBS活用について大幅に加筆した。さらにチェックリスト,質問,各章の例を見直した上で付録に個別に掲載し,実務支援ツールやWBS作成ガイドとして活用しやすくしている。
本書は,WBSの初期の作成,その後の修正,そして活用方法についてのガイドを示すもので,具体的なハウツーを指向したマニュアルではない。本書は,あらゆるプロジェクトまたはプログラムのマネジメントに参加,あるいは興味を持つプロジェクト・マネジャー,メンバー,契約スタッフなどを対象にしている。本書を利用する上でプロジェクトの多様性を認識し,それに応じて作られるWBSも異なることを知るべきである。とはいえ,普遍的な原則が存在し本書ではそれを指摘する。
本書はPMBOK(R)ガイド第3版に準拠しているが,それ以外にも一般に受入れられている情報ソースを参考にしている。PMI標準化委員会は,WBS実務標準の定期的改訂を予定している。お気づきの点があればご意見をいただきたい。以下に本書の構成を示す。
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